特集

2025年 第22回ショップスタッフディスプレイコンテスト(2025年通年)

2025年 総評 MARDEN 椎野傳一氏
今回で22回目となるJSA大賞ディスプレイコンテストは、21回目の昨年と同様の応募数が有り、売場のプレゼンテーションに対する関心がまだまだ衰えていないことを感じました。
一方一昨年の応募数をピークにやや減少傾向があることも見逃すことができない状況です。
コロナ後の傾向として、新たな販売戦略である効果的なプレゼンテーションの取り組みへの関心が高くその体系化が今後の専門店経営において不可欠な課題であると認識している企業と、未だにディスプレイが手間やコストのかかる演出技術でしかないと過小評価している企業とにハッキリ分化してしまっているようです。
昨年も述べましたが、コロナ明けの人手不足は店舗販売での重要な接客力の低下につながる大きな問題です。接客だけを考えたら人が足りない分接客の総量が減少してしまい、接客できるお客さま数に限界が生じると共に一人のお客さまに掛けられる接客時間の短縮にも繋がってなってしまいます。結果として接客の質量共にレベルダウンすることになり店舗売上の下方圧力になってしまうのは誰の目にも明らかでしょう。「ディスプレイやPOPは第二第三の販売員」と言われてきたではありませんか。人材不足の今、接客だけに頼らず店がお客さまに伝えたいことを見るだけで伝えられるようにするのがプレゼンテーションです。
ひと目で自店の品揃えの特徴や商品情報を理解してもらえるビジュアルなプレゼンテーション(ディスプレイやPOP等)への取り組みは、今後特に重要な課題であることに間違いありません。
今回の受賞作を振り返ると、企業毎にディスプレイに対する関心を高め見せ方(商品情報の提供方法)の新たな手法を工夫することで、昨年にも増して著しいレベルの向上が見られました。受賞作は皆、変わらず高いレベルを維持し続けているお店、改めて商品の見せ方の大事さに気付き真摯に取り組み始めたお店です。
今回の大賞は、企業を挙げてプレゼンテーションのレベルアップに地道に取り組んでこられた山野楽器が初受賞しました。オーソドックながらどこか新たな発想が感じられる秀作で、審査員全員が大賞に相応しいと認めるものでした。
ただ一方では人手不足の影響か、昨年過去最高だった応募店数が昨年今年と減少傾向にあり、「人に頼れない分、仕組みを工夫しよう」としたお店と、「人がいないから、手が回らない」と諦めてしまったお店とに分かれてしまったのは残念でなりません。かといって時間や手間のかかるものや、プロにしかできない高度な技術を要するものにしてしまったら本末転倒。これからのプレゼンテーションは、手間やコストをかけずに、誰にでもすぐ簡単にできるものでなければなりません。
そういう意味で、今年度(5月・10月)の実務者研修では、昨年のテーマであった「何を伝えるか?」に加え手間をかけずに時短を意識し、かつ新人スタッフでもすぐ簡単にできるポイントをテーマに実践的かつ実務重視をテーマにカリキュラムを作り直し、誰でも受講できるような編成にいたしました。
2025年受賞作品

大賞 山野楽器 銀座本店5F管楽器
管楽器と言えばほぼゴールドをイメージするところですが、今回のプレゼンテーションは銀座の町を思わせるスタイリッシュなシルバーで統一した極めてユニークな演出となっています。クラシック音楽をテーマにオーソドックスな管楽器を冬景色をモチーフに銀世界を思わせる空間作りが秀逸なディスプレイに仕上がりました。基本はしっかりと守りながら色の使い方でオリジナリティを表現する、優れた企画力には審査員は満場一致で大賞に値するという高評価でした。

優秀賞 イワキ 横浜ランドマーク本店
ブルー×ホワイトのシンプルな色使い故に、遠目からのアイキャッチャーとして最大限に効果を発揮しています。北欧生まれのブランドに相応しく白と青の十字柄がいかにも北欧というイメージを醸し出しています。
又国旗を思わせるクロスがギフトリボンを思わせ、ギフト商戦のシンボルとして効果を発揮しているなど、ディスプレイプランにきめ細かな配慮が見られ交換が持てます。
通常存在感の薄いと言われるメガネフレーム(フレームだけでボリュームがない)の陳列を、遠目からも目を引くプレゼンテーションに変えています。

MD賞 ホットマン 富山大和店
カテゴリーも色目もデザインも違う従来の主力商材ではない服飾雑貨のニューアイテムを、今まで慣れ親しんできた表現方法から新たな発想の見せ方に変えたことで、お店の皆さんの新商品への強い思い入れが伝わってくる店頭演出になっています。
MDのコンセプトを的確に表現するために、今までカラフルなタオルを訴求するために使用してきたモノトーン主体の陳列什器を、ボルドーのテーブルクロスを敷いただけで新アイテムのアイデンティティを見事に表現したプレゼンテーションです。

色彩賞 ルピシア イオンモール和歌山店
今夏の応募作の中で、最も色の効果を発揮できているプレゼンテーションであると審査員の方々全員が推挙したディスプレイです。
一つ一つが小さな食品パッケージ等の商材を売場の中で際立たせるのには、色を絞り込んでボリューム陳列し大きな色の塊にして見せるのが最も効果的なテクニックです。これはどんな装飾物やPOPにも負けない販促効果ですし、それでいて商品だけで構成するのでコストはゼロです。
同じ色目の商材を丹念に集約するのは大変な作業ですが、アイキャッチャー効果としては絶大なものと言えます。

プロモーション賞 メーカーズシャツ鎌倉 丸の内丸ビル店
丸の内の「コットンクラブ」(ライブレストラン)とのコラボレーションを梃子にした販促ということで、本来の主であるオーソドックスでクールなビジネスイメージから、一転華やかでエキサイティングな表現に変化させてお客さまの目を引き付けるディスプレイになっています。コラボレーションを使ったプロモーションの鉄則である提携先のブランドイメージを自身のブランドコンセプトを傷付けずに融合させるという難しい課題をうまくクリアしているのではないでしょうか。
商品自体は本来のモノ作りの確かさを見せつつシンプルに、一方背景の深いレッドやサックスなどの演出ツールの使い方での新しさの演出が秀逸です。

入賞 イワキ 新宿伊勢丹メンズ館店
全体を通して色の統一感と構成バランスの良さが際立ったディスプレイです。
基本的には左右対称形の空間構成をしつつ、適度にそれを崩すかのような演出小物を配することで、単調な表現にならないように計画されたかなり高度なプレゼンテーションになっており、見せ方についてお店の方達が常に学んでいることが感じられます。
また、赤×金×白の三色のバランスが良く、一枚の絵画を見ているようです。

入賞 かねまつ 銀座4丁目店
ウインドウ全体を使った空間の構成が素晴らしい出来です。それぞれの陳列が基本に忠実な三角構成で出来ていて、且つ三台の陳列台もしっかりと三角形で構成されていて、ディスプレイの教科書を見ているようです。加えて上部に配されたエンジェルの切り抜きは左右対称にして、全体的なまとまりを感じさせています。
各陳列台の下部も逆三角形になるよう設計されていて、全体のバランスだけでなく商材が浮かんで見えるような演出効果もありそうです。

入賞 銀座マギー MAGGYCLOSET三井アウトレットパーク店
降る雪をイメージした白の装飾ツールに赤のコートが抜群のコントラストとして効いています。
白い箱型の店名サインに赤のリボンをかけていかにもクリスマスのギフトボックスを思わせる工夫も良いですし、それが道行く人へのアイキャッチャーにもなっています。コートの赤を主役に、他のアイテムの色をベージュ系に統一したことで、ウインドウ全体にまとまりが感じられ、よりインパクトのあるプレゼンテーションの完成です。

入賞 メルボメンズウェアー 麻布テーラー博多店
クリスマスをイメージした緑×赤×金(黄)の奇をてらわない色使いが、クラシックでオーソドックスな確かな品質を提供するという自店のコンセプトを良く表現しています。
ジャケット&タイの色柄に合せた紙袋やギフトBOXに赤いリボンを掛けたシンプルなツールは、テーブルに敷いた商品と反対色のチェックのクロスと合せて、目を引くプレゼンテーション効果絶大です。他の装飾物のカラーも緑×赤×金に統一したことで、より効果を高いものにしています。
このように色の主張を明確にすることは、演出効果の向上に大きく役立ちます。

入賞 ワシントン靴店 WASHルミネ大宮店
主力商材であるスニーカーをグリーンカラーに絞り込むことで、店内での注視ポイントが明確になりました。又そのグリーンのスニーカーを際立たせるため、テーブルに深紅のクロスと白のファー風ラグを敷いた工夫は思惑通りの効果を生んでいます。スポーティでカジュアルテイストの強いスニーカーにややエレガントなイメージの敷物を使うことで、大人っぽい雰囲気が感じられて他店との差別化が見て取れます。
陳列の高さにも工夫がされていて、商品のカラーに変化がないのに全体的には単調にならないような気づかいが感じられ、高評価となりました。

入賞 豊田まちづくり 私の部屋T-FACE店
いかにもお正月の家族の食卓を再現したようなディスプレイになりました。
特に下段の白の割合が多い皿や小鉢などの食器の陳列のベースには赤い布を敷いたことが、インパクトのある店頭演出を完成させています。又上段の赤の塗り物の演出には白の鏡餅を配することで、下段とは変化を付け単調にならないような気遣いにも好感が持てました。